NO DRINK, NO LIFE. 虎

虎の尾を踏んでくれた人々

あらやだ、見つかっちゃった

その26 飲まない人には愛想が悪くて当たり前なのだ

 最近、世の中にはお酒を飲まない人が多数派になって、やむなくそんなお客さんもウェルカムにした飲食店が増えていますが、世も末だなと思います。お盆や正月で親戚が集まっているわけでもあるまいし、何が悲しくて、ごはんを食べている人の隣でお酒を飲まなければならないのか。落ち着いて飲めやしないのは、私だけでしょうかね。何度も言ってますが、「虎の子」は飲まない人にまるで優しくありません。愛想が悪いのも当たり前です。来て欲しくないですから。車を運転してきた人以外は、ウーロン茶やノンアルコールドリンクは頼まないでいただきたいというのが本当のところです。当店の料理はお酒を進めるためのもので、ごはんのおかずではありません。たった1杯しかお酒を飲まないのに長居する人も、お客さんでもなんでもない。お酒は飲むものであすって、眺めるものではありませんよ。

その25 銀座のレストランではありません

 日本全国のマニアックな「トラノヲ」ファンの皆様、何かの間違いでここにやってきた皆様、ウチの「虎の子」は代々木上原にあります。銀座に同じ名前の隠れ家レストランがあるそうですが、そちらではありませんから(そちらのオーナーさんから電話がありました)。間違えて訪ねたりしないように。口の悪いオーナーを期待している怖いもの見たさの皆さんは、代々木上原を目指してくださーい。良い子の皆さん、分かりましたか? 

その24 本醸造は置いていないと何度言えば分かるのだ

 今どきの若者は苦手ですが、かといってお年寄りにも苦手な方がいないわけではありません。その方は1年半ほど前からいらっしゃるようになりました。おそらく地元暮らしで、年のころは70歳ぐらいでしょうか。目つき、態度、言葉遣いのすべてが「Mr.傲慢」というオーラを発していらっしゃいます。いつも早い時間にお一人で来店され、カウンター席に座って毎度同じことを言うのがパターン。いわく、「前はもう一人女の子がいたよね」とか。「店を開いて何年になったか」とか。だから、今はバイトが見つからないから一人でやっているし、上原の営業は7年になるの。奥さんがいるのかどうか知らないけど、会話がないんだろうなと想います。

 まあ、そこまで100歩譲って我慢ができます。でも、「本醸造はないのか。なんでもっと安い酒を置かないんだ」の一言には、堪忍袋の緒がブチッと切れます。じゃかましい。店主は私だ。私が酒を選ぶんだ。本醸造は嫌いなんだ。文句があるなら、よそへ行け、よそへ! と言えたら、どんなに気持ちがいいでしょう。まあ、こちらもいいトシになりましたので、「虎の子は料理に合わせた純米中心でやっています。お口に合わないんじゃないですか、ウチの味が」と、二度と来ないようにとの願いを込めて憎々しげに言うことにしています。来るたび来るたびそういうあしらい方をしているのですが、なぜかそのMr.傲慢老人が来てしまうんです。なんざんしょう。あの鈍感力は見事なほどです。いや、褒めていません。次こそ、次こそは必ず、追い返してやる。あー、腹が立つ!

その23 カウンター席では会話をせんかい

 今どきのお客様は大抵連れ立ってお酒を飲まれるのが普通で、お一人で召し上がる方は珍しくなりました。私は知らない店に入るのが苦にならず、カウンター席でお店の方と他愛のない話をしながら飲むのは、むしろ好きです。常連さんと話ができれば、自分の居場所を見つけたような気分になります。一見さんは一見さんの分を弁えて、店や常連さんに気を遣いながら飲むというのが、飲ん兵衛の仁義というものです。が、哀しいかな、無粋な方が増えていて、私もときどき頭が痛くなります。

 年末の書き入れ時に、推定平均年齢32歳の男性客が4人でいらっしゃいました。印象がなかったから、たぶん一見のお客様だと思います。普段ならテーブル席にご案内するのですが、当日はイベントがあったためカウンター席に座っていただくことになりました。どこの店でもそうでしょうが、店主の正面とか、カウンター奥は常連様の優先席になっているものです。常識がある方であれば敬遠されます。コワイ常連様から、「そこはオレの席だから」と声が掛かったりもします。虎の子はそこまでの店ではありませんし、なにぶん席数に限りがあるので、そういうこともあります。ただ、この4人組はカウンター席の意味が分かっていない様子でした。

 どんな業界にお勤めなのか検討がつきませんが、悪口とグチ話と噂話のリフレイン。しかも、酒はあまり飲まれず、料理も最低限の品数。もちろん、こちらとの会話もありません。少しは気を遣え、1mと離れないところでそんな話を聞かされる、こちらの不幸も考えてみろと言いたい。悪さこそしませんが、これは狭い店のカウンター席でやることではありません。なんで虎の子に来たのか、チェーン店の方がよほどお似合いではないでしょうか。4人揃って、おそらく出世できないだろうなと思いました。こういうとき私は怒りを念に換えて波動砲をぶっ飛ばすのですが、感じとる力が弱いのか、結局、長っ尻されてしまいました。あー、気分が悪い。あー、鬱陶しい。

 店の人と会話ができないうちは、カウンター席はまだ早い。飲ん兵衛の仁義を守れ。えーい、分かったか!

その22 焼きソラマメで店を評価するとは、見上げたものです

 ずいぶん前の話になりますが、まだ外が明るい口開けの時間帯に40代の男性のお客様が二人いらっしゃいました。失礼ながら、くたびれた背広姿からはサラリーマンの悲哀が感じられ、出世街道からは外れたタイプ。でも、そんなことはもちろん口が裂けても申しません。いつものように愛想よくオーダーを伺いに行くと、体の大きな男性が写真を撮ってもいいかと仰います。どうやら「食べログ」投稿マニアのようです。「ええ、どうぞ」というと、ビールを運ぶ前からあちらこちらを撮り始めました。鬱陶しいと思いましたが、他のお客さんはまだいらっしゃいませんから無視することに。それにしても、目つきから値踏みをしているのがありありと伝わり、なんだか嫌な感じ。ずかずかと土足で上がられた気がします。20歳前後なら分かりますが、いい歳したオッサンですからね、許可はしたものの常識ってものがないのでしょうか。

 で、卵焼きだの、焼きソラマメ、薫製だのを肴に、ビールと焼酎を1杯ずつ召し上がります。ぼそぼそとした会話で不景気な話をされ、男二人で何が楽しいんだかと思っていたら、30分でお帰りでした。あれま。なんだろうと思っていたのですが、いつまで経っても「食べログ」にアップされません。そんなお客様が来たことも忘れかけていたころ、記事がアップされていました。読んで愕然。怒りが一瞬で沸点に達しました。

 「まずまずの酒の品揃え。酒屋任せでしょうか?」グルメを気取るなら、ホームページを読んでほしいものですね。自分で選んでいます。「焼きソラマメ、普通」そりゃそうです。そんなもんです、焼きソラマメなんですから。「玉子焼きはお母さんレベル」舌がバカなのでしょうか。出汁巻きですよ、出汁入り。そんなこんなで、デブいわく(客でもなんでもないので、ただのデブで十分)虎の子はスナック風ですが和食の店だそうです。ホームページを見ている割に文字が読めないのか、うちは飲み屋です。客単価4000円の酒が進む料理を出す店です。間違っても「うどん屋」じゃありません。

 その書き込みに、どこかのバカがコメントを残しています。「なんかわかります。家庭料理っぽいけどおいしいのと家庭料理の粋を出ないお料理」。何が、わかります、だ。バカはバカとお友達でめでたい限りです。自分の口に合わない、自分をかまってくれないからといって、店の悪口を書くことにどれだけの意味があるのでしょう。自分は人のために良いことをしていると思っているのでしょうか。悪口を書かれた店はそのことを反省し、一生懸命頑張るとでも思っているのでしょうか。おアシが1万、2万の店と同じ味を求めることの理不尽さを感じないのでしょうか。悪口から生まれるプラスの効果などありません。何年も店を構えている店、界隈で大切にされている店には理由があります。イチゲンさんにはそれが見えないだけの話。自分には分からないけれど、きっといいところがあるのだろう、程度に思うのが大人の分別というものではないでしょうか。

 虎の子は、料理と酒だけ出してお金をいただいている訳ではありません。ちょっとした会話で楽しい気分になってもらったり、憂さを晴らしていただくことも、代金に含まれています。いい歳してそれぐらいが分からないのであれば、どれだけ多くの店に足を運んで飲み食いしようが、修業が足りないと思いますね。まあ、そういう人って、一生涯分からないのでしょうが。久しぶりに階段に大量の塩をまきました、あー、腹が立つ!

その21 ポッキーは出しませんよ、ポッキーは

 世の中、右を見ても左を見ても不況不況不況のオンパレードで、同業の中にも節を曲げて「こうなりゃ、どんなお客様だってウェルカム♡」という店が増えてきていますが、困ったものです。虎の子は、嫌な人はたとえ店が閑古鳥でもお断りです。特に、セコイ飲み方をするお客は大嫌い!

 とある夜の8時過ぎのこと。サラリーマン風の初めてのお客様が戸を開けるなり、「6人ですが、入れますか」と言ってきました。年のころなら40代半ばで、一見常識がありそうな雰囲気。もちろんですと迎えたのですが、後から付いてきた上司らしき60代がいやーな雰囲気を全身から醸し出していました。で、入るなり、「よそで食事してきたので、飲むだけね。打ち合わせをするのでテーブルをつけてくれる?」と横柄な言い方。カチンと来ましたが、迎えてしまった以上しょうがない。テーブルをつけてオーダーを伺うと「ビールの大瓶」とのこと。置いていませんのでその旨をお伝えすると、不満気に生ビールを注文されました。席では「エビスの生は美味いですよね」という発言を制し、「バカを言え、ビールは大瓶だよ」とオヤジ(すみません、お客と認めないのでこういう言い方になります)が力説していました。好みとはいえ、なんともセコイ。料理も安さ優先で3品ほど。それからは聞くだけ腹が立つので、一切無視して仲のいいご常連のお相手をして過ごすことにしました。が、それから30分を過ぎても1人からも次のオーダーが来ない。ビール一杯でよくまあ我慢ができるものです。1時間近く経ってようやくお1人様から酎ハイのオーダーをいただいたのですが、例のオヤジは「2杯目頼んだの?」とルール破りを咎めるような口調。でも、他の方が「じゃ、こっちも」となり、なんとか全員から2杯ずつのオーダーをいただくことができました。ここまでで十分腹が立っていましたが、最後にオヤジから出た言葉が私の心に怒りの火を点けました。「ポッキーはないの?」 ナニー、ポッキーだぁ? ふざけるな、虎の子はスナックじゃない、ある訳ないだろ! こちらの全身の毛穴から発した不愉快モードが効いて、ほどなくセコ客は精算してお帰りになりました。6人の男が1時間半飲んで、しめて1万2000円弱。まったく大したお客様です。あー、気分が悪い! 

 ご存じのように、代々木上原には居酒屋チェーンがありません。6人組もしょうがなく虎の子に入ったのでしょうが、郷に入れば郷に従え、というのが大人の分別というものです。これは違ったと思ったら、最初に一言詫びて帰る選択肢もあります。それを、ポッキーをつまみにビールをちびちび飲むというのは格好が悪すぎます。あちらも二度と来たくないでしょうが、こちらだって願い下げです。セコイ飲み方する皆さんは店に寄らなくて結構、とっとと家路に就いてほしいものです、まったく。

その20 しらふでキスとは、いい度胸だ

 飲み屋と食べ物屋の違いが分からない野暮な人については、ここに何度か書きましたが、この間のカップルはバカの度合いが図抜けていました。今思い出しても腹が立ちます。

 20代後半と思われる2人はまったくの新規。ウーロン茶を2杯というので、お酒を飲まない方はお断りしていることを伝えると、「1人飲めばいいんですか。じゃあ、こっちは日本酒をください」と。ちょっとムカッとしまたしが、注文されるのであれば断る理由もありません。数品の料理も召し上がり、そのうち男性が酔っぱらってきた様子。テーブルで向かい合わせだったのが、そのうち女性が隣に移動するのが見えました。なんだろうなと思いつつも、カウンターに座った常連のお客様とお話をしていたのですが、体を寄せ合ったと思ったら、なんとキスをしやがりやがったのです。目を疑いました。断っておきますが、女性が飲んでいたのはウーロン茶ですよ、ウーロン茶。それに、カウンターからテーブルまでは2メートル。全身の血が沸騰しそうになりました。おのれ、飲み屋をなんと心得る! あんまり腹が立って、「ちゅーちゅーしたいんだったら、ホテルに行けばいいのに」と嫌がらせを聞えるように言ったのですが、蛙のツラになんとやらで、真っ赤な顔の男性はともかく、シラフの女性も腰をあげません。「○○○ヘビに怖じず」と申しますが、虎の子でそれをやるとは、いい度胸をしています。次に来ることがあっても、絶対に入店させません。ふざけるな。

 電車の中で化粧する女性や、酒を飲んでグダを撒いている男性も腹が立ちますが、小さな飲み屋で乳くりあうとは、あきれ果てた。それがどれほど恥ずかしいこと、店に迷惑をかけているか、言わなくては分からないのでしょうかね、まったく。代々木上原であれほど大量の塩を撒いたのは、初めてでした。

その19 予算以上の料理は出せません

 飲み屋の年末は書き入れ時です。虎の子でもそれなりに忘年会のご予約をいただき、なんとか新年を迎えられます。貸し切りの場合はあらかじめ予算を伺い、その範囲内でコース料理をお出しするのが、当店のやり方。狭い厨房で一品一品作っていては、到底体がもちません。

 数年前になりますが、ある方から店を貸し切りたいとご予約をいただきました。その方はご常連ではなかったのでシステムをご説明したところ、3000円で飲み放題にしてほしいとのことでした。うちではお通し代として500円、ビールは650円、焼酎はだいたい600円いただいています。仮にビール1杯、焼酎2杯をお飲みになると、それだとすると、残り650円。これでは料理が1品しか出せません。で、お一人5000円以上でお願いしたいとお伝えすると、3000円だと言い張ります。その後、なんとか4000円まで上げたいただいたのですが、案の定、当日もめました。乾杯をして1時間経ったあたりで料理を3品出し、それで打ち止めにすると、幹事さんらしき人が「だめだめ、まだお腹が空いている人がいるんだから」と訳が解らないことを言います。あのー、システムは言いましたよね。4000円だとこれこれしか出せないとも言いましたよね。とご説明したのですが、こちらには関係ない勝手な事情をクドクド言って、まるで埒が明きません。で、追加料金をいただき、お酒と料理をお出ししましたが、あれはなんだったのでしょう。ご本人にしてみれば「貸し切ってやってるんだ。多少無理してももっと飲ませろ」といった気持ちだったのでしょう。40代だったと思いますが、どこでそんな飲み方を覚えたものか。気分が悪いったらありません。

 世の中には困った人がたくさんいますが、大きな顔をして無銭飲食する人は初めてでした。

その18 営業方針は店主が決めます

 先日、女性のお客様が二人でお見えになりました。お一人はお酒を召し上がっていただけましたが、もう一人の方はウーロン茶で料理をお食べでした。うちの料理は酒との相性を考えて作っているのに、お茶では哀しい……。

 で、帰りしな、お酒を飲まない女性がメニューのアタマの文字を読まれて気づいたのでしょう。「なぜこんなに料理が美味しいのに、お酒を飲まない人はお断りなんですか」とお尋ねになりました。ああ、またか。「ウチは飲み屋ですから。お酒を飲んでいただかないと商売になりません。それにウチの料理はお酒に合うように考えているので、お茶には合わないと思いますよ」。大抵のお客様はここまでご説明すると納得するというか、諦めていただけるのですが、この方はさらに「なぜ、わざわざ間口を狭くする必要があるのですか」と言うのです。カチンと来ました。あなたはオーナーか。その一言でアタマの中は怒りが煮えたぎりましたが、ここは冷静にならねば。「こんな小さな店ですから、ずっと料理を食べられても商売にならないのです。ごはんを食べるのならカフェや、居酒屋のチェーンがいっぱいあります。そちらに行かれた方がいいんじゃないですか」と言いましたが、お客様の目には明らかな敵意が浮かんでいました。あんたの曲がった根性を叩き直してやる、といった表情です。が、そんなことでビビる私ではありません。結局、お友達が違う話に持っていってくれ、お帰りいただきました。やれやれ。

 ご自分に甘くて他人に厳しい方は、どの世代にもいらっしゃるものです。このお客様もおそらく30代で、仕事をバリバリこなしていらっしゃるのではないでしょうか。でも、この程度の常識が身についていないのですね、哀しいことに。席数が14席しかなく、厨房が狭く、作り置きをするスペースもない店で、料理だけ食べられてもやってられないのです。世の中にはファミレスみたいに「お酒を飲まないお客様でも、お子様連れでも大歓迎」という店ばかりではありません。虎の子はずいぶん前にインターネットで叩かれましたが、いまだ怒る理由が分かりません。客の悪口を言うなど客商売として信じられない、上からモノを言っている、客を差別する、などなど。ですが、寿司屋で酒だけ飲んで帰る人をありがたいと迎える店主がいると思っているのでしょうか。レストランでパンとワインだけ頼んでテーブルを占拠するというのは、軽い業務妨害ですよ。

 間口を狭くするなという営業方針は、あなたが飲食店のオーナーになった暁にやってください。私はそういう詰まらない店には行きませんが。

その17 モノを壊したら謝るのが人の道です

 最近、言葉を知らない人たちが増えている気がするのは、私だけでしょうか。言葉を知らないってことは、言葉だけの問題じゃなく、常識を知らないということ。人として当たり前のことができない人が多くて、嫌になります。

 この間、20代の男女のお客さんが1組いらっしゃいました。あとに30代の女性が加わり、最終的には3人様に。この中の男性がとても身振り手振りの激しい人で、大きな声を挙げて話をされますた。で、その手が当たったのでしょうね、取り皿を落としてしまったのです。その皿は京都の錦市場で見つけたもので、京都に行くたびに取り置きをお願いしているのですが、入ってきません。値段は言いませんが、代えがきくものではありません。以前に手癖の悪い客に盗まれ(鏡を付けたのはそのためです)、現在3枚。それを割られてしまったわけです。この場合、いくら客であれ、謝るのが常識だと思いますが、違いますかね。その男性は壊れた欠片をつまみ、何も言わずこちらに見せるではありませんか。「割ったから片づけてほしい」ということなのでしょう。本気で怒鳴りそうになりました。ハラワタが煮えくり返りましたが、他のお客さんがとりあえず無言で対応しました。でも、ずーっとムカムカ。

 で、そのうちお勘定となり(この時も一言もありません)、店を出たので、呼び止めました。「モノを壊したのだから、ちゃんと謝りましょう」と怒りを抑えて言うと、男性客は驚き、隣の30代の女性は泣きそうな顔になっています。あのなー。いいですか、こちらは恐喝している訳じゃないんです。被害者はこっちなの。男性客の反応がまたヘンでした。「ありがとうございました」と言ったのです。アタマが混乱してきました。後で考えたのですが、「常識を教えてもらってありがとう」という意味だったのかもしれません。で、最後に「また来てもいいですか」と。来なくていいですと言いたいところを「お好きにどうぞ」と言って店に戻りました。あー、腹が立つ。

 モノを壊しても客だったら許される、とでも思っているのでしょうか。器はしょせん消耗品だというのでしょうか。日本で20年も30年も生きてきて「すみません」と「ありがとうございました」の正しい使い方を知らないとは。上司だか何だか知らないけれど、30代で後輩を叱ることもできない女性も情けなくありませんか。久しぶりに塩を撒いたことは言うまでもありません。

その16 ソフトドリンクは喫茶店でどうぞ

 虎の子はお酒と肴を召し上がっていただいて、商売をやっています。料理はお酒を進めるためのもので、それだけご注文いただいても商売が成り立たちません。逆に、お酒だけのお客様もうれしさ半分。たいがいは長っちりで、こちらが帰りたくても帰られなくなるのです。

 この間、若いカップルがいらして男性が「お酒が飲めないとだめですか」とお尋ねでした。で、「ウチは飲み屋ですので、お酒を召し上がっていただけないお客様はお断りしているのですが」と言うと、男性が「ソフトドリンクは何が」とさらにお尋ねです。渋々、ウーロン茶か、ウコン茶がありますと答えると、今度は女性が「じぁあ、私は……」。てっきりビールでもご注文になるかと思ったら「コーラください」とのことでした。ヨシモト新喜劇なら、ここで全員がコケています。うんざりして「置いていません」と言うと、女性が「シンジラレナーイ」だそうです。その言葉をそっくりそのまま返してやりたくなりました。いつからコーラが酒になったのでしょう。それに、ウチの料理が炭酸の甘ったるいコーラと合いますか。どういう味覚をしているんだろう。シンジラレナーイ。
その15 今どきの年寄りも困ったもんです
 虎の子のご常連様にはことのほか評判のよろしい、このコーナー。このところ更新されていないじゃん、とお叱りの声をいただくこともありますが、文句のつけようのないお客様ばかりに来ていただいているからではなく、ただただ私が怒り疲れているだけです。訳のわかんないお客様が本当に多くて……。

 先日、60代の男性と部下とおぼしき20代の女性が来店されました。で、ご注文を伺うと男性が「お茶をください」、女性は「私はいりません」と言うのです。おいおい、ここは食堂じゃないぞ。「ウチは飲み屋ですので、お酒をお飲みいただかないお客様はお断りしています」と言うと、「ウーロン茶ぐらいはあるだろう」とおばかな一言。そりゃ、あります。でも、それでいくらのお金になると言うのでしょう。常識のなさに呆れて「ですから、うちは飲み屋です」と繰り返すと、ようやくお帰りになりました。今どきの若い者も困ったものですが、今どきの年寄りも十分に困ったもんです。あー、いやだいやだ。

その14 お通しは当然ながらお代をいただきます

 先日、口開けに若い女性がいらっしゃいました。長く店に立っているとお酒の飲み方の予想が着くもので、その方は明らかに飲まないという雰囲気。早い時間はこちらの準備もありますから、それはそれでいいのですが。で、案の定、ご注文はカシスウーロンのみ、料理のオーダーはありません。当然ながら、お通しは出ています。しばらくして「帰ります」とのことで、1150円になることを告げると「えっ、高い」という声が。カシスウーロン650円にお通しが500円で1150円。どこが間違っているのでしょう。ここから、この方とのオバカな会話が始まります。

 「うちの両親が同じ商売をしているけれど、お通しにお金を取ったりしない」「そうですか。お通しを取る取らないのは店の方針でよって違います。ご両親がどんな店をやっているかは知りませんが、こういうやり方が世の中にないか、帰ってお聞きになってなってください。本当なら1品料理をお願いしているところです」「だったら、頼みます」「いいえ、結構です」「ひどい店」「どうぞ、お帰りください」「インターネットのグルメサイトに書き込んでやる」「どうぞどうぞ、楽しみにしています」。で、扉を閉めながら「誰もいないより、1人でもいた方がマシでしょ」と捨てゼリフを残して、お帰りでした。大量の塩が玄関先に撒かれたことは言うまでもありません。

 世の中にはいろんな店があって、お通しを出さない店もないわけではありません。が、タダで出すというのはスナックか、バー、安いだけの飲み屋ぐらいなものではないでしょうか。せいぜいカウンターの乾きものぐらいですけど。虎の子のお通しはほぼ毎日変わりますし、だいいち、手が掛かっています。しけた柿の種を出すわけじゃないんです。この方はスナックと居酒屋を混同しているのでしょうね。それと、お客さんが1人でもいた方がいいかは、店主が判断することです。こっちはチェーン店のアルバイトじゃないんですから。常識のない客に気を使うぐらいなら、いない方がマシ。それとも、サクラになるからいいんだろうとでも言うのでしょうか。若い女を入れれば若い男がやってきてお金を落とす、クラブなんかと一緒にしては困ります。

 あれから数日。インターネットで検索していますが、いまだ「虎の子、お通しでお金を取るひどい店」という書き込みは見つかりません(見つけたときは教えていただけると幸いです)。その前にこちらが書いてしまいました。この女性は二度と来ないでしょうが、つくづくご両親がお気の毒です。まあ、育てたのはご当人たちでしょうから、自業自得でしょうが。

その13 待ち合わせするなら駅前か、公園で

 30代後半といえば、責任ある仕事を任され、独身であれば使えるお金も多く、体力は旺盛。それなりの常識をもっていて、然るべき年代です。が、哀しいかないるのですね、いくつになっても世間のことをナーンニモ考えられない人々が。

 ある日の口開けの時間帯です。4人様のご予約で、お年の頃は30代後半と思われます。1人が扉を開けた瞬間、「うぁー、小さーい」と大声。ナンダ、コイツハと思いました。初対面で相手に悪印象を与えるのは、育ちも日ごろの心がけも悪い証拠です。先に飲み物のご注文を伺うと、ウーロン茶が3杯、1人だけビールとのこと。やっぱりです。ここで店主登場。「ウチは飲み屋なので、お酒を召し上がらないのならお断りします」「1人は飲みますよ」「でも、うちはお食事もありませんので、お断りします」。ここまで言っても、まだブツブツ言いたそうな表情。そのリクツが通るなら、14席しかない店を貸し切り予約して13人がウーロン茶でもいいことになってしまいます。それは威力業務妨害というもの。やがて、ここは女性に優しい、お客様はだれでもカミサマの店じゃないらしいと観念したらしく、立ち上がりました。で、帰りしなに「うぁー、小さーい」とほざいた1人が「二度と来ませんから」と捨てゼリフ。こちらも「ぜひ、そうお願いします」と応戦してやりました。ウーロン茶しか飲まない、長っ尻の客のために大切な休日が潰されてはかないません。

 彼女たちは、30代後半までどうやって生きてきたのでしょう。飲み屋はどんな生業(なりわい)か知らずに育ったのでしょうか。飛行機で3人分の席を取っておいて、2人しか乗らないからと告げたら発券カウンターでグランドホステスはどう言うでしょう。銀座の寿司屋に子供3人を連れ、飲み食いするのは大人1人だけ、子供は干瓢巻きか何かを食べさせてくれと言ったら歓迎されると思いますか。

 この間、北原亞以子さんの「まんがら茂平次」という小説を読んでいたら、胸のすく言葉がありました。明治初年、御一新により東征してきた薩摩の兵隊が東京(江戸)蕎麦屋で食べた蕎麦の盛りが少ないからと代金を値切ろうとするので、店主がキッパリたしなめます。「江戸にぁ、つりはいらねぇって科白はあるが、まけてくれろなんて科白はないんですよ。彰義隊は粋だったねぇ。古道具屋をからかって値引きさせても、その分をご祝儀だと言って置いていったもの」。電車の中でしたが、拍手喝采したくなりました。

 自分たちの常識がすべて通用しないということを知っていることが、大人というもの。トシだけ食ってもオツムが子供じゃあ困ります。「今の若いコって、さー」なんて言えた義理じゃ、ありませんよ。

その12 えーい、この文字が読めんのか

 自分たちが若かった頃、お酒を飲むことは圧倒的多くの人にとって「常識」でした。今ほど娯楽の種類が少なかったこともあるけれど、友だちとお酒を飲みつつ、いろんな話をするのが日々の活力源でした。目上の方からはタメになったり、タメにならなかったりする、たくさんのことを教えてもらったものです。が、最近お酒を飲むことは、常識ではなくなってしました。どちらかというと、男性に飲まない人が増えている気がします。もちろん、体質的に飲めない人はいるでしょうし、飲みたくない人に無理強いするのは犯罪です。でも、「虎の子」は飲み屋ですので、ご利用をお断りしています。

 ある日のこと、若いカップルが来店されました。いつものようにバイト君がオーダーを伺いに行ったのですが、厨房に戻ってくるなり、「お客さんが“飲みはヤメにしておきます”と言っていますが、どうしましょう」と言います。あー、またか。ここは年上が話した方がカドが立ちませんので、私が説明に顔を出しました。「ウチは飲み屋ですので、お酒を召し上がらない方はお断りしているんです」。すると、男性が「美味しいそうな料理が書いてあったので食べたいんですが。キビシイっすか」。なんだか、微妙に日本語がズレている感じの物言いです。はい、ギビシイっすよ。第一、外に掛けているメニューにも「お酒を飲まない方はお断りします」と書いてあるでしょうに。私「ええ、申し訳ありませんが」。すると、男性は困った顔。女性の方はものすごく睨んできます。「なにかご不満があるのかな?」と言いたかったけれど、さすがにセーブ。もちろん、お帰りいただきました。その後、たぶん二人の間では「信じられない」とか、「サイテー」といった言葉が交わされたことでしょうが、知ったこっちゃありません。

 飲み屋でお酒を飲まないのは営業妨害です。これは、寿司屋さん(回転しないところですよ)で握りや刺身を頼まず、ガリでお酒を飲むようなもの。「帰れ」と言われてもしょうがありません。それとも私を睨みつけた女性は、その勇気があるのでしょうか。「何を頼もうがお金を払うんだからいいでしょ」と言いたいのでしょうが、そういう人(お客様とは呼びません)に限って長っ尻で、いくら店が混んできても帰ろうとしない。気遣いがないものです。「えーい、“飲まない人はお断り”の文字が読めんのか」と怒鳴れたら、どれだけすっきりすることでしょう。

 店には店の流儀があります。それを守っていただくことが、お客様としてお迎えする前提です(民法的にも、たぶんそうでしょう)。お金さえ払えば何をしてもお客様、という訳ではありません。たとえ口に出さなくても、ハラの中では確実に思っています。そうでなけりゃ、素人、アルバイトです。普段どんな店に行かれているのか知りませんが、逆ギレされても困ります。「虎の子」はこれからもずーっとこの流儀でやっていきますので、あしからず。

その11 グルメランキングがなんぼのモンでしょう

 最近、お店にいらしたお客様から「『トラノヲ』のページが更新されていない」という苦情(?) をいただくことが増えています。ホームページを楽しんでご覧いただいているのは大変ありがたいのですが、これは困ったお客様(ま、お客様と認めた訳じゃないですけど)がいた場合に書いているのでして、手当たり次第に怒っているんじゃありません。どうか、そのあたりを誤解なさらないようにお願いします。

 このごろは非常識なお客様がいなくて……と言いたいところですが、やっぱりいました、お子ちゃまの酒飲みが。年のころなら20代後半でしょうか、男女5人でご来店のグループです。虎の子では、ご存じのようにお1人様1品、お酒1杯以上をお召し上がりいただいています。そうでない場合には「席料」をいただいています(お品書きに書いてありますからね)。ですが、その方たちはなかなか料理もお酒も人数分ご注文いただけません。イライラ。で、30分ほど経過した段階で、先のお約束をバイトくんが申し上げたところ、しぶしぶ最低限のご注文いただけました。イライライラ。

 この程度のことは日常茶飯事ですので、ここに書くほどではありません。が、厨房に戻ってきたバイトくんが聞き捨てならないことを言うのです。「あの方たち、東京○○○○○ガイドによく書いているみたいですよ」。アタマの中で堪忍袋の緒が、ブチッと鈍い音を立てて切れました。この方たちはそのサイト名を聞こえよがしに挙げることで「悪く書かれたくなければサービスしろ」と暗に言いたかったのだなと、私は理解しました。オモシロイ。どうぞお好きに。大いに悪口を書いていただいて結構です。酒を飲めない人なんぞに、何を言われようが気にしませんから。

 一見の店を何十、何百と回ってはグルメのランキングサイトに書き込むのを趣味にされている人がいるようです。それは個人の趣味なので、こちらがどうこう言う筋合いではありません。でも、「ランキング」って一体何の意味があるのでしょうか。料理や酒に“絶対”はない、というのが虎の子の考えです。一人ひとり舌の経験は違いますし、シチュエーションもまちまち。親しい人としみじみ飲めたときと、恋人と喧嘩したときに飲んだときでは、味が違うものです。気持ちよく楽しく飲めれば、大抵のものは美味い。何の夢も希望もない人がそれを食べただけで幸せになるといった料理は、残念ながら知りません。もちろん、美味い不味いがあるのは事実です。プロが自分の名前で執筆するのは認めます。私にだって、もちろんあります。でも、それはその人の中の基準でしかありません。

 虎の子では、お客様であればだれでも神様だとは思ったことがありません。虎の子にとって大切なことは、常識をわきまえ、お酒と料理をちゃんと楽しめるお客様だけです。グルメランキングなど、へっちゃらです。分かっていただけましたか、自称グルメの皆さん。

その10 お酒を飲むだけならbarをお奨めします

 ご存じのように当店では「お酒を飲まない方は原則としてお断り」をモットーにしています。最近はお酒を嗜まない方が多いのですが、そういう方はウチでは歓迎いたしません。お客様の中には「今日はクルマなんで、ウーロン茶を……」とおっしゃる方がいます。でも、それは法事か何かで、周りから酒を勧められそうになったときに言うべきことばです。下北沢にはカフェなり、喫茶店なり、ノンアルコールの店がたくさんあるのですから、ぜひよそへ行っていただきたいと思います。

 でも、こう言うと「酒を飲めばいいんだろう」という、常識をわきまえない方が必ずいます。頭の悪い高校生じゃあ、あるまいに。ルールを守りさえすれば、マナーを欠いても知ったこっちゃないという屁理屈は通じません。勘違いもいいところです。だって、ウチは1杯千円を取るようなbarじゃないんですから。

 どこかで食事をされて、飲み屋ではゆっくり腰を落ち着けてお酒を飲む--。ご自分たちの中では、とても合理的なのでしょう。しかし、虎の子のような店はそれではやっていけません。お品書きのところに野暮を承知で「お一人様お料理を1品以上をお願いします」と添えているのですが、それさえ無視される方がいます。また、中には「前の店で食べてきてしまって」と言い訳される方もいますが、だったら真っすぐ帰った方がいいのではないでしょうか。

 当店はお酒を飲まない方はお断りですが、お酒だけしかオーダーされない方もお断りです。料理を数品に、愉しいお酒を数杯。そういう飲み方がいちばん美しい。「ほど」を心得ないお客様は、年齢に限らず、何度通っても常連にはなれませんよ。

その9 飲み屋は自宅ではございません

 最近の若者は……と、ひと括りに批判めいたことを言うつもりはありません。なにぶん最近の年配もかなり問題のあるケースを多々見てきておりますので。ただし、こと飲み方に関して、若い方たちは基本のキを知らない方が少なくありません。今回のお話は虎の尾を踏まれたケースというより、その前段症状。お気をつけください、というお願いかな。私もヤワになったものです。

 某日、20代の男女二人連れのお客様がいらっしゃいました。このごろは女性よりも男性の方がお酒に弱いケースが多くなっているらしく、女性は芋焼酎をぐいぐいお飲みでしたが、男性がお飲みになるのは甘いカクテル系ばかり。料理はいかの塩辛をはじめ、日本酒や焼酎にしかあわない酒肴系のものばかりをオーダーされます。たしかに品書きにはあることはありますが、その組み合わせで口の中でどんな味になっているものやら。あんまり想像したくありません。とはいえ、それはお客様の好みですから、お断りはしませんが、お作りしていて首をかしげたくなります。

 その方(男性)はその後も甘い味のお酒を中心に飲まれ、ピッチが早かったこともあり、しだいに前傾姿勢になっていきました。ついには、上半身をテーブルに投げ出すようになり、大切な椅子の脚が不安定な角度に……。厨房から覗いていると、まるで大きな犬が寝そべっているようです。幸い女性がしっかりしており、また男性もそれ以上お飲みになりませんでしたが、あーあ、と思いました。おそらくこの方、ご幼少のころから好きなものばかり食べて育ったのでしょう。お父さん、お母さんも、注意されなかった気がします。飲み屋と自宅の違いがまだお分かりになっていないのでしょうね。

 その日のお客様に限らず、勘違いされる若者は多いです。もっと背筋を伸ばして、かっこよく飲んで欲しい。飲み屋ですから酔っぱらってもかまいませんし、多少のことを煩く言うつもりはありません。しかし、美しくない飲み方はよくないと思います。また、注文の仕方にもセンスが表れます。食べたいものの順に頼んでは、お里が知れるというものです(文化的な育ちという意味です)。

 虎の子の将来は、若いお客様の肝臓にかかっています。お酒をたくさんお飲みいただくのはありがたいのですが、それだけでは大人の飲み方と呼べません。ぜひとも素敵な飲み方を身につけていただきたいと思います。

その8 だったら、来なきゃいいでしょうに

 虎の子は、年齢でお客様を差別をしません。どんなお年であれ、ちゃんとお酒の飲み方をご存じの方、常識を弁えた方は大歓迎です。しかし、そうでなければいくらお金を使っていただいても、関係ありません。まして、お酒を飲まない方は老若男女を問わずお客様ではありません。

 この間虎の尾を踏んでくれたのは、50代と思しきサラリーマンの二人連れでした。その方、こちらがお願いした訳でもないのに、カウンターの合い向かいに座ってしまいました。ご存じの方も多いと思いますが、もともとそこには席がなく、混んでしまったときに緊急避難用に使っているスペース。正面を向いて座る余裕はなく、奥の冷蔵庫から食材を出したりするときにはお立ちいただくことになります。その旨を説明してご了解いただけない場合には、お断りになられてもやむを得ません。

 で、くだんのサラリーマンらしき人というと、精算の折にバイト君に言ったらしいのです、「店の造りを考えた方がいいんじゃないの」と。それを後で聞いて、私の頭の中でドカーンと大砲が放たれました。こちらからお願いしたわけでもないのに、何という言い草。それも店主にではなく、バイトに言うとは姑息です。こういう造りが嫌なら、無理して来なければいいだけの話ではないでしょうか。第一、そういうことを言ったところで、どうになるわけでもありません。ただのイヤミです。それとも何ですか、アナタ様がお金をポンと払ってくれるといいのでしょうか。そうしたら、お気に入りの造りにいたしますが。

 さしてお酒を飲まず、料理を頼まない方、年配だからといってエラソーにしたい方は、わざわざお越しいただかなくてもチェーン店がたくさんあります。二度とお迎えすることはありませんが、そちらをお勧めします。

その7 かっぱ寿司じゃありません

 これは皆さんに伺いたいことなのですが、飲み屋にデザートを置いてあるものと思っている人って、今どれだけいるのでしょうか。私が知っている限りでは、料亭や料理屋といった食べ物屋さんではコースの最後に水菓子(果物のことですよ)が出てきますが、酒を飲ませることを主にした店でデザートを置いているところは知りません。たまに店主のサービスで出すことはありますが、それは常連さんへのサービスで、通常はせいぜいお茶どまりだと思います。

 ある晩のこと、30代と思しきカップルがテーブル席に座りました。これがトラノヲを踏んでくれたのです。ムキー! 2人でお酒を一杯ずつ。料理は軽いものを2品だけ。それで、ずっーと話をしているのです。それも2時間、2時間ですよ。あんまり非常識なので、常連さんの横に座って完全に無死していたら、男性が「デザートってないのですか?」と言うではありませんか。続いて、女性が「ワタシ、お酒はもういらない」とも。はぁ? アー・ユー・ジャパニーズ? 耳を疑いましたね。1秒と置かず「ありません」と答えましたら、どうも気にいらなかったらしく「その言い方はないだろう」と男性が怒るのです。ホワイ? 虎の子は「かっぱ寿司」じゃないのだ、ケーキも果物もないものは、ないの!

 寿司屋のカウンターをラーメンだの、ケーキだのがグルグル回る時代に小さなころから慣らされてしまうと、こうなるのでしょうか。あー、情けない、恥ずかしい。私だったら、アラカルトで食べられるフレンチレストランでワイン一杯で2時間粘り、最後にケーキありませんかと聞く勇気はありません。

 虎の子のメニューには「お酒を飲まない人はお断り」と書いていますが、今度はその下に「常識がない人はお断り」とでも書き加えようかと思っています。

その6 居酒屋は20歳になってから

 飲み屋は分別ある大人が楽しむための場所、だと思っています。お金を払いさえすれば、何をやってもいいわけではありません。これって常識だと思うのですが、世の中にはそうでもない方がたくさんいらっしゃいます。

 「虎の子」はお酒を飲まないお客様はお断りしています。ところがつい先日、乳母車を押してそのまま入ってこられた方がいらっしゃいました。団体のお客様の最後でしたので、つい受け入れてしまいましたが、次はお断りいたします。そのお子さんは珍しく泣いたり、騒いだりしませんでしたが、飲み屋はタバコを吸う方がたくさんいらっしゃいます。小さなお子さんにとって、決して好ましい環境ではありません。当然、周りのお客様も落ち着きません。

 以前も同業にもかかわらず、「オレの子供だからいいだろ」というバカなレストランのオーナー夫妻がいましたが、これって理屈になっているのでしょうか。他人の子供だったら誘拐です。もちろん入店をお断りしました。

 赤ちゃんの健康のことを考えてください。周りのことも考えてほしいです。「虎の子」は、20歳を過ぎてからご来店をお待ちしています。それまで、店があるのかどうか、分かりませんが。

その5 3m先でチューはないだろ

 飲み屋は分別ある大人が楽しむための場所、だと思っています。お金を払いさえすれば、何をやってもいいわけではありません。これって常識だと思うのですが、世の中にはそうでもない方がたくさんいらっしゃいます。

 「虎の子」はお酒を飲まないお客様はお断りしています。ところがつい先日、乳母車を押してそのまま入ってこられた方がいらっしゃいました。団体のお客様の最後でしたので、つい受け入れてしまいましたが、次はお断りいたします。そのお子さんは珍しく泣いたり、騒いだりしませんでしたが、飲み屋はタバコを吸う方がたくさんいらっしゃいます。小さなお子さんにとって、決して好ましい環境ではありません。当然、周りのお客様も落ち着きません。

 以前も同業にもかかわらず、「オレの子供だからいいだろ」というバカなレストランのオーナー夫妻がいましたが、これって理屈になっているのでしょうか。他人の子供だったら誘拐です。もちろん入店をお断りしました。

 赤ちゃんの健康のことを考えてください。周りのことも考えてほしいです。「虎の子」は、20歳を過ぎてからご来店をお待ちしています。それまで、店があるのかどうか、分かりませんが。

その4 玄人もどきの仕事知らず

 これは、ちょっと前のお話です。某情報誌の女性ライターが「虎の子」に取材を申込んできたことがありました。下北沢特集だったか、居酒屋特集だったか、内容は忘れました。いずれにしても、たくさんの店を紹介するありがちな企画です。世の中にこの手の雑誌はたくさんありますが、小さなスペースでは正確に情報が伝えること自体に無理があります。店を褒めているつもりなのでしょうが、あまりに表現が平凡で、特徴がちっとも分かりません。

 いつもなら断るところですが、ある方を介してのご紹介だったのでやむなく引き受けましたが、悪い予感が当たり、記事の内容は惨憺たるものでした。今思い出しても腹が立ちます。取材に訪れた30代前半とおぼしきライターとカメラマン(ともに女性)は料理2品と酒を用意してほしい、とのことでした。でも、お酒は写真じゃ分からないから水でいいですよね、と言うと「最近の読者は目が肥えているので本物を」という返事。ウソつけ、と内心思っていましたが、言葉を飲み込み協力してあげました。で、ライターからの質問があれこれ。店のコンセプトについては「ちょっと手をかけた家庭料理と珍しい酒が楽しめる、大人のための居酒屋です。間違っても、酒の飲み方が分かっていない若者や女性にやさしくありません」と言ったのですが、そのライター曰く「若者にお酒の飲み方を教えて育てるのも、店の役割ではないですか」だそうです。何を甘えたことを。まったくバカに付ける薬はありません。飲み屋は飲み屋。学校ではありません。だったら、情報誌は何をやっているのでしょう。え、提灯記事ばかり書いているくせに。

 一応、原稿チェックというものがあるというので待ってましたが、送られてきた原稿は、取材した本人が書いたと思えないほどデタラメな内容でした。まず、「引き戸と茅葺き屋根の……」とあります。ウチは普通のドアで、瓦屋根葺きです。営業時間も定休日も間違ってました。加えて言い回しがダサい。「ゆるゆるとお酒を飲めば、大人の気分が味わえる」、なんじゃこりゃ。子供が聞きかじった大人の口ぶりを真似たみたい。薄っぺらいです。こちらにはプロがいますので書き直して送りましたが、それでも訂正されない部分が多くありました。そして、最大は写真です。なんとモノクロでした。記事のサイズも1/6ページほど。どこが最近の読者は目が肥えている、だ。ふざけるのもいい加減にしてほしいものです。

 情報誌のライターや編集者の皆さんの多くは「店を紹介してやるのだから協力するのが当然」とでも思っているのでしょう。たしかにそういう店もあるでしょうが、ウチは違いますからね。あくまで協力してあげているのです。編集のプロならではのオリジナルな視点で、表現してほしい。それがただでお付き合いしている店への義務でしょうに。なんでも雑誌に紹介されて美味しい、素晴らしいと褒めりゃあ、喜ぶってもんじゃないんだから。

その3 飲まないなら、予約をするな

 これは、ちょっと前のお話です。某情報誌の女性ライターが「虎の子」に取材を申込んできたことがありました。下北沢特集だったか、居酒屋特集だったか、内容は忘れました。いずれにしても、たくさんの店を紹介するありがちな企画です。世の中にこの手の雑誌はたくさんありますが、小さなスペースでは正確に情報が伝えること自体に無理があります。店を褒めているつもりなのでしょうが、あまりに表現が平凡で、特徴がちっとも分かりません。

 いつもなら断るところですが、ある方を介してのご紹介だったのでやむなく引き受けましたが、悪い予感が当たり、記事の内容は惨憺たるものでした。今思い出しても腹が立ちます。取材に訪れた30代前半とおぼしきライターとカメラマン(ともに女性)は料理2品と酒を用意してほしい、とのことでした。でも、お酒は写真じゃ分からないから水でいいですよね、と言うと「最近の読者は目が肥えているので本物を」という返事。ウソつけ、と内心思っていましたが、言葉を飲み込み協力してあげました。で、ライターからの質問があれこれ。店のコンセプトについては「ちょっと手をかけた家庭料理と珍しい酒が楽しめる、大人のための居酒屋です。間違っても、酒の飲み方が分かっていない若者や女性にやさしくありません」と言ったのですが、そのライター曰く「若者にお酒の飲み方を教えて育てるのも、店の役割ではないですか」だそうです。何を甘えたことを。まったくバカに付ける薬はありません。飲み屋は飲み屋。学校ではありません。だったら、情報誌は何をやっているのでしょう。え、提灯記事ばかり書いているくせに。

 一応、原稿チェックというものがあるというので待ってましたが、送られてきた原稿は、取材した本人が書いたと思えないほどデタラメな内容でした。まず、「引き戸と茅葺き屋根の……」とあります。ウチは普通のドアで、瓦屋根葺きです。営業時間も定休日も間違ってました。加えて言い回しがダサい。「ゆるゆるとお酒を飲めば、大人の気分が味わえる」、なんじゃこりゃ。子供が聞きかじった大人の口ぶりを真似たみたい。薄っぺらいです。こちらにはプロがいますので書き直して送りましたが、それでも訂正されない部分が多くありました。そして、最大は写真です。なんとモノクロでした。記事のサイズも1/6ページほど。どこが最近の読者は目が肥えている、だ。ふざけるのもいい加減にしてほしいものです。

 情報誌のライターや編集者の皆さんの多くは「店を紹介してやるのだから協力するのが当然」とでも思っているのでしょう。たしかにそういう店もあるでしょうが、ウチは違いますからね。あくまで協力してあげているのです。編集のプロならではのオリジナルな視点で、表現してほしい。それがただでお付き合いしている店への義務でしょうに。なんでも雑誌に紹介されて美味しい、素晴らしいと褒めりゃあ、喜ぶってもんじゃないんだから。

その2 恥の上塗り

 夏のある土曜日。近所で習い事をしているグループが6人ほどでやってきてテーブル席を占領しました。毎月同じようにやって来るところをみると、定期的に会を開いているもよう。年齢は40代から60代といったところで、男女入り交じっています。この人たち、どこが困った人かといえば、とにかく食べない、飲まないのです。1人1品、酒1杯が内規みたいになっているみたいに、それ以上の注文がピタッとありません。で、嫌なことに皿にほんのひと口だけ料理を残している。それで、バイトくんも下げようにも下げられません。そんなときに限って新しいお客さんがやってくるのです。某グループは後ろで「席、空いてますか」と言っているのを聞いていながら、知らんぷり。まるで営業妨害しているみたいです。

 それだけでも十分アタマに来るのですが、最長老の女性がたかだか数杯の酒で酔っぱらい、大声で叫ぶのです。内容が嗤ってしまいました。たまたま冷蔵庫に生酒があったのを見つけ、「生酒は自然な酒なの。だから、冷蔵庫に入れちゃダメなの」。さて、ちょっと詳しい人ならお分かりでしょうが、一般的な日本酒は樽に仕込む時と瓶詰めをする時の二度火入れをします。こうすることで、行きすぎる熟成を抑えるわけです。生酒とは、これをしていない酒のこと。それが可能になったのは低温で管理したまま流通できるようになったからです。もしも、生酒を常温でほうっておけば、みりんのように濃い酒になってしまいます。なーに言ってんだか。聞いているこちらの方が恥ずかしくなりました。やだやだ。

その1 タレントの正体見たり

 夏のある土曜日。近所で習い事をしているグループが6人ほどでやってきてテーブル席を占領しました。毎月同じようにやって来るところをみると、定期的に会を開いているもよう。年齢は40代から60代といったところで、男女入り交じっています。この人たち、どこが困った人かといえば、とにかく食べない、飲まないのです。1人1品、酒1杯が内規みたいになっているみたいに、それ以上の注文がピタッとありません。で、嫌なことに皿にほんのひと口だけ料理を残している。それで、バイトくんも下げようにも下げられません。そんなときに限って新しいお客さんがやってくるのです。某グループは後ろで「席、空いてますか」と言っているのを聞いていながら、知らんぷり。まるで営業妨害しているみたいです。

 それだけでも十分アタマに来るのですが、最長老の女性がたかだか数杯の酒で酔っぱらい、大声で叫ぶのです。内容が嗤ってしまいました。たまたま冷蔵庫に生酒があったのを見つけ、「生酒は自然な酒なの。だから、冷蔵庫に入れちゃダメなの」。さて、ちょっと詳しい人ならお分かりでしょうが、一般的な日本酒は樽に仕込む時と瓶詰めをする時の二度火入れをします。こうすることで、行きすぎる熟成を抑えるわけです。生酒とは、これをしていない酒のこと。それが可能になったのは低温で管理したまま流通できるようになったからです。もしも、生酒を常温でほうっておけば、みりんのように濃い酒になってしまいます。なーに言ってんだか。聞いているこちらの方が恥ずかしくなりました。やだやだ。